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酒と記憶の温度

大学卒業時のオール飲みが初めての経験だった。

旧友であるQ氏と、数年ぶりに夜通しで酒を酌み交わした。Q氏とは高校時代からの付き合いで、もう10年ほどになるが、同じクラスや部活ではなかったし、進学も理系と文系に分かれて別の道を進んできた。しかし、ここまで長くつながっている理由はお互いの趣味がほぼ一致していることにある。食べ物も、音楽も、映画も、小説の好みもまるで鏡に映したように同じ。

だけど、女性の好みだけは正反対なのだ。

僕は池田エライザのようにぱっちりした目の人が好みだが、Q氏はというと「幸薄そうな顔」に惹かれるタイプ。だから彼の恋愛エピソードはスローモーションで進んでいくように思えて、まるで少女漫画のテンポにイライラするかのように、その話を聞くたびについツッコミを入れたくなってしまう。

 

さて、話を元に戻そう。Q氏とは1か月に一度、どちらかの家で泊まりながら、お互いが最近楽しんだ音楽や映画について語り合う、ある意味、遠距離カップルのような付き合いをしている。だが今回のオールは、いつも以上に会話が弾んだ。映画を2本連続で観てそれについて熱く語り合ったり、僕の彼女が好きな小説家をQ氏も読んでいたことが発覚したり、普段と違う発見もいくつかあったのだ。

そんな風に盛り上がって、気づけば夜の20時半に集まってから翌朝の5時まで飲み続けていた。深夜、寒い中で食べたセブンのおでんと日本酒の組み合わせが絶妙で、これ以上ないほどに旨かった。朝方になる頃には、どちらが何を相手に伝えようとしていたのかほとんど覚えていない。しかし面白いことに、映画や音楽の話だけは頭にしっかりと残っているのだ。

僕は酒にはそこそこ強い方だが、日本酒を大量に飲んだ翌朝はやはりきつい。特に今回は頭痛がひどくて、「二日酔いに効く」と言われるシジミの味噌汁も気休め程度にしかならなかった。結局、一番効いたのはシンプルに「水と睡眠」だったと痛感する。

 

 

こうして、久しぶりのオール呑み明かしは終わったが、思い返せば内容はほとんど覚えていなくても、その空間の温度や会話の空気感だけはしっかりと記憶に刻まれている。Q氏とのこうした時間が、なんとも言えない心地良さをもたらしてくれるのだ。